強迫性障害とは?原因や特徴、治療方法を解説

COLUMN

「強迫性障害」とは、頭の中に浮かんだ考えやイメージによって不安や恐怖にかられ、それを取り払うために意思に反して同じ行為を過剰に繰り返す不安障害のことです。強迫性障害の原因としては、几帳面で神経質、融通がきかないなどの性格的な傾向と日々のストレスなどが関係していると考えられています。

本記事では、強迫性障害の特徴や発症する原因、症状や治療方法を解説します。

強迫性障害とは

強迫性障害とは、頭の中に浮かんだネガティブな考えやイメージが離れなくなり、そのイメージや考えから生まれた不安を払拭しようと同じ行為を繰り返してしまう精神障害のことです。[注1]

例えば、「自分の手が汚い」と思い手が荒れてしまう程に何度も手洗いやアルコール消毒をしてしまう、外出の際にドアの鍵を閉めたかどうかを何度も確認しないと気が済まなくなる、といった症状が挙げられます。

強迫性障害によるやりすぎ行為は、ストレスが蓄積されやすく心身に大きな負担を与える上に、周囲や人間関係へも悪影響を及ぼしやすいです。そのため世界保健機関(WHO)では、生活上の機能障害を引き起こす10大疾患とされています。

[注1]厚生労働省「強迫性障害」(参照:2022-08-25)

強迫性障害の主な原因

強迫性障害の原因は、現在はっきりと特定されているわけではありません。

性格傾向や育った環境に、仕事や学校でのストレスといった心理的要因が重なることで発症しやすくなると考えられています。強迫性障害になりやすい傾向として、几帳面で神経質、規則や手順を守ることに強いこだわりを持つ(強迫的パーソナリティ)性格等が挙げられます。

また性格傾向とは別に、虐待などを受け心的外傷を負ったときや、受験や就職、出産などの大きなライフイベントのタイミングでも強迫性障害を発症しやすい傾向があります。

強迫性障害の基本的な症状は強迫観念と強迫行為

強迫性障害の基本的な症状には、強迫観念と強迫行為の2つがあります。代表的な症状は以下のとおりです。[注1]

不潔汚染と洗浄

「自分が汚れている」「細菌に汚染されている」という思い込みから恐怖にかられ、手洗いや入浴、洗濯などの行為を過剰に繰り返してしまいます。またドアノブやつり革、手すりなどを不潔に感じ、直接触れなくなる場合もあります。

加害恐怖

「実際は違う」という自覚があっても、「他人に危害を加えてしまったかもしれない」と不安や恐怖にとらわれ、テレビや新聞、インターネットなどで事件や事故として自身が報道されていないか確認する行為です。警察に直接問い合わせたり、周囲の人に聞き回ったりする場合もあります。

確認恐怖

外出前に戸締まりや電気器具の電源スイッチ、ガス栓などを過剰に確認する行為です。直接触っての確認、指差し確認などを何度も行ったとしても、再び家に戻ってチェックしてしまう場合もあります。

儀式行為

自分で決めたルール(規則・手順・形式)に沿ってものごとを行わないと、大変なことが起こる、災難に見舞われるといった不安にかられて、どのような状況・タイミングであっても同じ方法で仕事や家事をこなそうとします。

この他にも、ラッキーナンバーや不吉な数字など、占いの範疇を超えて過剰に数字にこだわる、インテリアやデスクの上などに置く物の配置や対称性へのこだわりが強いといった症状もあります。

強迫性障害の治療方法

強迫性観念の治療には、認知行動療法と薬物療法の2つを組み合わせて行うことが一般的です。ここではそれぞれの治療法を詳しく紹介します。

認知行動療法

認知行動療法にはいくつかの治療法がありますが、強迫性障害には再発予防の効果が高いとされている、「曝露反応妨害法」が用いられることが多いです。曝露反応妨害法は、患者が強迫観念による不安と向き合うことで、これまで繰り返さずにはいられなかった強迫行為を我慢する治療方法です。

まずは症状が出現するきっかけ、どういった観念によって不安が乗じるか、強迫行為の具体的な内容や、周囲への巻き込みの有無、日常生活への影響度などを明確にします。

次にそれを元に治療目標や課題を設定し、段階的に治療を進めていきます。

薬物療法

強迫性障害に悩む患者の多くは、強迫症状の他に抑うつ、強い不安感といった症状があります。

そのため、通常は抗うつ剤のSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)を処方し、患者の状態を安定させてから認知行動療法を行います。服薬はうつ病よりも高用量・長期間となるため、まずは少量から始め、様子を見ながら徐々に服薬量を増やしていくのが一般的です。

SSRIは比較的副作用の軽い抗うつ薬ですが、相性によっては服用後に体調不良になることもあるため、異変があれば早急に医師への相談が必要です。

強迫性障害は治療によって治る病気

不合理だと自覚していても、一度頭に浮かんだイメージや考えを消すことができず、同じ行為を過剰に繰り返してしまう強迫性障害。

現在、明確な原因はまだ判明していませんが、地道に治療を繰り返すことで個人差はあるものの回復していくことが多いです。

治療を検討している場合は、医師とよく相談して認知行動療法と薬物療法の2つの治療内容や進め方を把握し、自分に合った方法で治療に向き合っていきましょう。

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