自動思考とは?改善する方法も併せて解説

COLUMN

自動思考とは、体験する出来事に対して反射的に生じる考えやイメージのことです。「物事をネガティブに考えがち」「慢性的にストレスを感じる」などの傾向が続いているときは、自動思考の機能に異常が生じている可能性もあります。つらい精神疾患につながる前に認知行動療法の専門家に相談しましょう。

今回は人が日常的に行う自動思考の概要と、自動思考にずれを感じる際の対処方法を解説します。

自動思考とは出来事に対して瞬間的に浮かぶイメージ

自動思考とは、ある出来事があったときに瞬間的に浮かぶ考えやイメージのことです。例えば、私たちは目の前にリンゴを置かれたとき瞬時にそれを「リンゴである」と判断できます。わざわざ「赤くて丸い果実だからリンゴだ」など遠回しに考えることはありません。これは自動思考により無意識にリンゴと認識しているためです。

自動思考は人の「認知」に影響を与える

自動思考は人によって傾向やくせがあり、これまでの人生で体験した出来事や生活環境によって形作られます。同じ出来事を体験しても人によって反応が異なるのは、それぞれの自動思考の傾向により物事のとらえ方が異なるためです。

例えば「友人にメールを送ったのに返信が返ってこない」という状況を想定しましょう。このときポジティブな自動思考の持ち主であれば「相手も忙しいのだろう」と楽観的に捉えられるかもしれません。一方でネガティブな自動思考の持ち主は「自分に興味がないのではないか」と悲観的に考えてしまう傾向にあります。

なお、精神医学では物事のとらえ方や現実の受け止め方を「認知」と言います。つまり、自動思考は個々の認知に影響を与え、認知の違いがその後の思考や行動の違いとして現れるのです。

人の認知は「自動思考」と「スキーマ」で決まる

自動思考に特定の傾向やくせをもたらす潜在的な知識や価値観を「スキーマ」と言います。スキーマは、自身や周囲の環境を定義するために過去の経験を体系化した心の設計図です。

例えば、私たちはリンゴと聞けば「赤くて丸い果実」を瞬時に思い浮かべられます。これは既に意識の中に「リンゴのスキーマ」があるためです。しかし、人によってはリンゴと言えば青リンゴを思い浮かべるかもしれません。これは、その人にとってのリンゴのスキーマは「青くて丸い果実」だからです。

このようにスキーマには個人差があり、また一人ひとりが持つスキーマは無数にあります。その人のスキーマによって自動思考も影響を受けます。人の認知は自動思考とそれを司るスキーマによって決まります。

自動思考が偏ると「認知のずれ」が生じる

日常生活において人が正しく判断・行動するためには、その状況に応じて適切な自動思考を働かせられる状態であることが望ましいです。しかし、何かしらの要因により自動思考が極端にネガティブな方向に偏ると、過度なストレスから合理的な判断が行えない状態に陥ることがあります。これを「認知のずれ」と呼びます。

なお、代表的な認知のずれとして以下の10種類のパターンが知られています。自身に当てはまるところがないかチェックしてみましょう。

1. 白黒思考(物事を白か黒かではっきりさせないと気が済まない)
2. 過度な一般化(十分な根拠もなく、それを一般的な法則だと思い込む)
3. フィルタリング(良い部分を無視して、悪い部分だけ見てしまう)
4. マイナス思考(全てをマイナスに捉え、自分や他人の価値を下げる)
5. 結論の飛躍(根拠もなく結論付け、それ以外の考えを否定してしまう)
6. 誇大視と過小評価(自身の問題を必要以上に大げさに捉え、長所や魅力を低く捉える)
7. 感情的決めつけ(嫌なものは嫌、ダメなものはダメと感情で決めつける)
8. すべき思考(「~すべき」「~しなければならない」と脅迫的に思う)
9. レッテル貼り(自分や挫折した人にネガティブなレッテルを貼る)
10. 自己関連付け(自分に関係がないことでも自分に責任があると思ってしまう)

自動思考を修正する方法

「ネガティブな気分になることが多い」「慢性的にストレスを感じる」など、認知のずれが思い当たる場合は自動思考の修正を試みましょう。なお、自動思考の修正は容易ではありません。1人で悩まず、認知行動療法の専門家への相談も検討しましょう。

1. 自動思考やスキーマを客観的に分析する

自身の自動思考やスキーマを客観的に分析できれば、ネガティブな自動思考の傾向やくせに気が付くことができます。まずはネガティブな気分の原因となる事柄を特定し、それに対する自分の素直な気持ちを整理しましょう。

このとき思いついた考えは紙に書き出すことが大切です。抽象的な気持ちを視覚化することで、自身の考えを俯瞰的に見られるようになります。分析を進めると、そのような考えに至る過去の経験(スキーマ)も見えてくるかもしれません。

自動思考の傾向が見えてきたら、なぜネガティブな考えを持ってしまうのかその根拠を整理しましょう。自動思考は無意識化で行われるため、普段はネガティブな気持ちが先行してその根拠までは考えないものです。改めて考えてみると、そこまでネガティブになる必要もなかったと思えるかもしれません。

2. 行動認知療法の専門家に相談する

認知行動療法とは、カウンセリング等で人の認知に働きかけ、気持ちを楽にしてストレスを軽減する心理療法です。認知のずれに起因する精神疾患に対する治療として広く一般的に行われています。

ネガティブな自動思考に対して一人で自問自答するのは簡単ではありません。専門家と一緒に自己分析を行い、適切なカウンセリングや治療を受けることで新たな視点を見つけることができるかもしれません。

思考のくせに悩んだら行動認知療法の専門家に相談しよう

自動思考とは、目の前で起こる出来事に対し反射的に浮かび上がってくる思考やイメージのことです。過度なストレス等やスキーマによって認知のずれが生じると、さまざまな精神史疾患につながる恐れがあります。ネガティブ思考から抜け出せない、慢性的にストレスを感じるという場合は、認知行動療法の専門家に相談しましょう。

求人情報はこちら
初めての方へ