トラウマフォーカスト認知行動療法とは?概要や効果、注意点を解説
COLUMNトラウマフォーカスト認知行動療法とは、トラウマを抱えた子どもを対象にした心理療法のことです。この心理療法を受けることで気持ちをコントロールできるようになるため、日常生活も問題なく過ごせるでしょう。
本記事では、トラウマフォーカスト認知行動療法について解説します。得られる効果や注意点も解説しているので、併せて参考にしてみてください。
トラウマフォーカスト認知行動療法(TF-CBT)とは?
トラウマフォーカスト認知行動療法とは事故や事件、虐待などによって、こころに傷を受けた子どもを対象にした心理療法のことです。例えば、以下のような症状が見られる子どもは、トラウマフォーカスト認知行動両方の対象とされます。
● こころに傷を負う原因となった出来事を思い出すのを嫌がる
● 気分が変わりやすく、すぐにイライラしたり不安がったりする
● 攻撃的な行動が見られる、もしくは問題行動を起こす
また、トラウマを抱えた子どもだけではなく、親や療育者も一緒にトラウマフォーカスト認知行動療法を受けることで、サポート機能の向上が期待できます。
TF-CBTプログラムが目指すゴール
TF-CBTプログラムが目指すゴールは「子どもや親、養育者がトラウマに関連する行動や感情をうまくコントロールできるようになること」です。
例えば、交通事故の後から車を怖がっていた子どもが、TF-CBTプログラムによって恐怖心をコントロールできるようになれば目標達成といえるでしょう。TF-CBTプログラムを受けることで、健全な生活を送れるように安心感を高めていきます。
トラウマフォーカスト認知行動療法の構成要素「PRACTICE」
トラウマフォーカスト認知行動療法は9つの構成要素からできており、それぞれの頭文字を取った「PRACTICE」で表されます。ここでは、各構成要素を見ていきましょう。
心理教育(Psychoeducation)
心理教育では、一般的なトラウマ反応についての知識を子どもや親、養育者に提供します。
ペアレンティングスキル(Parenting skills)
ペアレンティングスキルでは、子どもの感情や行動を調整するために提供します。
リラクセーションスキル(Relaxation skills)
リラクセーションスキルでは、落ち着く方法を身につけます。
感情の表現と調整スキル(Affect expression and regulation skills)
感情の表現と調整スキルを学ぶことで、さまざまな気持ちがあることを理解し、それらに適切に対応できるようになります。
認知コーピングスキルと処理(Cognitive coping skills and processing)
認知コーピングスキルと処理では、思考・感情・行動の関係性を理解して、ネガティブな考えを前向きにしてバランスが取れるようにします。
トラウマナレーション(Trauma narration)
トラウマナレーションでは、子どもが体験した出来事を振り返り、話ながら整理します。9つの構成要素の中で、重要視されています。
実生活内でのトラウマの統制(In-vivo mastery of trauma)
実生活内でのトラウマの統制では、トラウマを思い出させる刺激を回避しなくても日常生活が送れるように支援します。
親子共同セッション(Conjoint parent-child sessions)
親子共同セッションでは、子どもと親、または養育者と子どもが実際に体験したトラウマについて話し合います。
将来の安全と発達の強化(Enhancing safety and future development)
将来の安全と発達の強化では、子どもが発達力を取り戻し、安全で健康的な生活が送れるよう生活上の留意点や課題をまとめます。
トラウマフォーカスト認知行動療法によって期待できる効果
トラウマフォーカスト認知行動療法によって期待できる効果は、以下のとおりです。
● PTSD症状の軽減
● その他の症状の改善
● 親や養育者への影響
それぞれの効果について解説します。
PTSD症状の軽減
トラウマフォーカスト認知行動療法では、PTSD症状の軽減が見込めます。PTSDとは、自分の意思とは関係なくネガティブな感情に支配されたり、不安や緊張が高まったりする精神状態のことです。
トラウマフォーカスト認知行動療法を受けることで自分の気持ちをコントロールできるようになるため、PTSD症状の軽減が期待できます。
その他の症状の改善
トラウマフォーカスト認知行動療法はPTSD症状以外に、以下の症状も改善できます。
● 不安感
● うつ
● 行動上の問題
● トラウマに関する恥
● 性的逸脱行動
● 他者への信頼感
● 社会的適応力
トラウマフォーカスト認知行動療法を受ければ、日常生活に支障をきたさなくなるでしょう。
親や養育者への影響
トラウマフォーカスト認知行動療法は子どもだけではなく、親や養育者にも良い影響をもたらします。例えば、子どもが重篤なトラウマを体験すると、親や養育者もPTSD症状が現れるケースも珍しくありません。
そのため、トラウマフォーカスト認知行動療法に親や養育者も参加することで、負の症状を緩和できたり、子どもをサポートする能力が向上したりします。
TF-CBTが治療に当てはまらないケース
急性の自殺念慮や重篤な自傷行為が認められる場合は、トラウマフォーカスト認知行動療法を中断しなければいけません。まずは、子どもの精神状態が安定するように電話対応を行ったり、セッションの数を増やしたりするのが先決です。
薬物療法や入院治療なども取り入れながら、より集中的なサポートを実施していきましょう。
まとめ
トラウマフォーカスト認知行動療法は子どもや親、養育者が参加して、トラウマを乗り越えるための心理療法です。感情をうまくコントロールできれば、健全な生活を送れるようになります。
ただし、重篤な自傷行為や急性の自殺念慮が認められる場合は、トラウマフォーカスト認知行動療法ではなく、より集中的なサポート体制を整えるようにしましょう。